GUIDE
採用サイトの「数字で見る」
何を載せるか、どう見せるか。一般論ではなく、RELENSが掲載している採用サイト69件を実際に開いて数えた結果から整理します。
What Is a Numbers Page
「数字で見る」とは何か
会社の状態を数値でまとめて見せるコンテンツのことです。「数字で見る〇〇」「数字でわかる〇〇」「NUMBERS」「FACT」など呼び名は企業ごとに違いますが、役割は同じで、文章を読まなくても会社の輪郭がつかめる場所をつくることにあります。
このページで「持っている」と数えた条件
到達できる
採用サイトのトップから1クリックで開けること。奥に置かれていて候補者がたどり着けないものは数えていません。
まとまっている
独立したページか、トップページ内のセクションとして数値が集約されていること。本文中に数字が散っているだけのものは除いています。
採用の文脈である
個人情報保護方針、ESGデータ集、技術情報など、採用の判断に使わないページは除外しました。
Why It Works
数字が使われる理由
採用サイトの多くは文章と写真でできています。そのなかで数字だけが持つ役割が3つあります。
数字だけが果たせる3つの役割
解釈を挟まずに伝わる
「風通しがよい」は書き手の解釈ですが、「男性育休取得率92%」は観察できる事実です。候補者が自分で判断できます。
他社と並べて比較できる
最終比較の場面で候補者は複数社を並べます。文章は比較しにくく、同じ単位の数字は並べられます。
短時間で読める
長文を読む時間がない候補者でも、1画面で会社の輪郭がつかめます。読み物を読む前の入口として機能します。
What to Publish
載せる数字の代表例
載せられる数字は多くありますが、大事なのはその数字から候補者が何を判断できるかです。6つに分けて整理します。
分類と、候補者がわかること
| 分類 | 数字の例 | 候補者がわかること |
|---|---|---|
| 会社 | 従業員数 / 拠点数 / 売上高 / 設立年 | 規模と成長の度合い |
| 人 | 平均年齢 / 男女比 / 中途入社比率 | どんな人が働いているか |
| 仕事 | 職種別の構成 / 事業別の売上比率 / 顧客数 | 自分がどこに配属されるか |
| 働き方 | 平均残業時間 / 有給取得日数 / リモート率 | 入社後の1日の過ごし方 |
| キャリア | 平均勤続年数 / 社内公募の実績 / 研修時間 | 成長できるか、続けられるか |
| ライフイベント | 男性育休取得率 / 復職率 / 女性管理職比率 | 長期的に働き続けられるか |
69 Recruiting Sites, Measured
69サイトを調査|実際によく掲載されている数字
ここからは一般論ではありません。RELENSが掲載している採用サイト69件をすべて開き、「数字で見る」の有無と掲載項目を1件ずつ記録しました。
- 調査対象
- RELENSが掲載している採用サイト69件
- 調査日
- 2026年9月11日
- 判定方法
- 全件を実際に開き、リンク文言と遷移先の見出しの両方で確認
- 項目の母数
- 11ページ。14サイト=13社で、カヤックは新卒・中途が同じページを参照している
設置率は20.3%。5社に1社だった
持っている 14件
全体の20.3%。独立したページが12件、トップ内のセクションが6件(うち4件は両方を持つ)。
持っていない 55件
全体の79.7%。大企業・スタートアップを問わず、数字をまとめていない採用サイトのほうが多数派でした。
呼び名はばらばら
「数字で見る」「数字でわかる」「数字で語る」「数値で紐解く」「NUMBERS」「STATISTICS」。共通の名前は定着していません。
掲載項目の出現率(母数11ページ・複数該当あり)
- 従業員数・社員数54.5%
- 育休取得率54.5%
- 研修・育成の実績54.5%
- 有給取得日数・取得率45.5%
- 創業年・設立年45.5%
- 男女比36.4%
- 拠点数・店舗数36.4%
- 職種別の構成27.3%
- 中途入社比率18.2%
- 平均年収・給与18.2%
- 平均勤続年数18.2%
- リモート・在宅率18.2%
- 売上高18.2%
- 平均年齢18.2%
- 離職率・定着率18.2%
- 平均残業時間18.2%
- 女性管理職比率18.2%
上位は従業員数・育休取得率・研修の実績が並びます。一方で、一般的な記事が代表項目として必ず挙げる平均年齢は18.2%(11ページ中2ページ)しかありませんでした。4ページは人と働き方の項目を1つ以下しか持たず、事業の規模だけを数字にしています。
Common Is Not Useful
よく使われる数字≠掲載すべき数字
調査結果をそのまま真似すると、多数派と同じページになります。順位の上下ではなく、候補者の判断につながるかどうかで選び直す必要があります。
従業員数・創業年・拠点数
会社の規模を示す数字です。転記するだけで出せるため掲載率が高くなりますが、入社後の働き方は何も分かりません。
平均年齢
代表項目として紹介されがちですが、実測では18.2%。「平均年齢32歳」だけでは、20代中心なのか30代に偏っているのか判断できません。
平均残業時間・離職率・リモート率
いずれも実測では18.2%しか載せていません。集計の手間がかかり、数字が良くないと出しにくいためです。だからこそ、出している企業は候補者から見て判断しやすくなります。
職種別の構成・中途入社比率
27.3%と18.2%。「自分はどこに配属されるのか」「中途で入って馴染めるのか」という、応募前の具体的な不安に直接答えます。
Start From Their Questions
候補者が知りたいことから選ぶ
出せる数字を並べるのではなく、面接でよく聞かれる質問から逆算します。質問に数字で答えられるなら、それが載せるべき項目です。
質問から項目を決める
| 候補者の疑問 | 答えになる数字 | 実測での掲載率 |
|---|---|---|
| どのくらい働くのか | 平均残業時間 / 有給取得日数 / リモート率 | 18.2% / 45.5% / 18.2% |
| どこに配属されるのか | 職種別の構成 / 事業別の売上比率 / 拠点数 | 27.3% / 18.2% / 36.4% |
| 中途でも馴染めるのか | 中途入社比率 / 前職の業界内訳 | 18.2% / ─ |
| 長く働けるのか | 平均勤続年数 / 離職率 / 育休復職率 | 18.2% / 18.2% / 54.5% |
| 成長できるのか | 研修時間 / 社内公募の実績 / 昇格までの平均年数 | 54.5% / ─ / ─ |
How to Show It
良い見せ方と伝わりにくい見せ方
同じ「平均年齢31.2歳」でも、添える情報によって候補者が判断できることが変わります。
平均年齢
31.2歳
「若い会社」しか伝わらない
20代が多いのか、20代と40代に割れているのかが分かりません。管理職が何歳くらいなのかも読めないため、キャリアの見通しも立ちません。
平均年齢
31.2歳
組織構成とキャリアの見通しが読める
年代の分布があれば偏りが分かり、管理職の平均年齢があれば何年目で任されるのかが推定できます。基準時点と母数があるため、他社とも比較できます。
Four Things to Attach
数値・定義・対象者・期間をセットで示す
数字を1つ載せるたびに、4つを添えます。どれか1つでも欠けると、候補者はその数字を比較に使えません。
数字に添える4点
数値
単位まで書きます。「率」なのか「日数」なのかで意味が変わります。
定義
何をもってそう数えたか。離職率なら「自己都合による退職のみ」か「定年を含む」かで数字が変わります。
対象者
誰を数えたか。正社員だけか、契約社員やアルバイトを含むか。単体かグループ連結か。
集計期間
いつの数字か。「2025年度」「2026年3月末時点」。これがないと、古くなったことに誰も気づけません。
4点を揃えた書き方
育休取得率 100%
対象:2025年度に育休取得対象となった社員12名
集計期間:2025年4月〜2026年3月
4点が欠けた書き方
育休取得率 100%
対象者も期間もないため、1名が取得して100%なのか、50名が取得して100%なのか分かりません。
Beyond the Average
平均値だけでなく分布・内訳を出す
平均残業時間15時間と書かれていても、全員が15時間なのか、半分が0時間で一部が30時間なのかは分かりません。
平均に足す3つの見せ方
中央値を併記する
月平均残業時間15.4時間/中央値11.2時間。差が大きいほど、一部に偏っていることが伝わります。平均だけを出すより誠実で、結果として信頼されます。
職種別・部門別に割る
エンジニア12.3時間/営業21.1時間。候補者は自分が応募する職種の数字だけを見ます。全社平均は、どの職種の候補者にとっても自分の数字ではありません。
分布を段階で出す
講談社は勤続年数を「5年未満」「5〜9年11か月」と5年刻みの分布で出しています。平均値ひとつより、自分がどの層に入るのかを推定できます。
Reference
「数字で見る」が参考になる採用サイト
調査で実際に確認したページのうち、参考になる6件です。各社の観察記録は事例集で読めます。
調査で確認した6件
トヨタ自動車株式会社 - 採用情報調査した中で人と働き方の項目が最も多い10項目。離職率と平均月残業時間に「単体・自己都合による退職」「2023年度」と条件を添えている。観察記録を読む
株式会社横浜銀行 - IT・デジタル人財向け採用人的資本投資額、社内公募の募集口数、20代の公募合格率まで出している。育成と登用を数字で示している数少ない例。観察記録を読む
株式会社マネーフォワード - 採用サイト従業員数や平均年齢に加えて、エンジニアに聞いた好きな開発言語、デザイナーが使うツールの比率を載せている。観察記録を読む
株式会社講談社 - キャリア採用サイト職種別の人数と勤続年数の分布を段階ごとに出し、平均値ではなく分布で見せている。観察記録を読む
freee株式会社 - 採用サイト事業の数字(ユーザー企業数・シェア率・拠点の国数)と、社内部活動の数・年間の書籍購入数を同じページに並べている。観察記録を読む
警視庁 - 令和8年度警視庁採用サイト人事データではなくパトカー・白バイ・騎馬隊の馬の頭数、拾得物の受理件数を出している。その組織にしかない数字の例。観察記録を読む
How to Build It
「数字で見る」の作り方
人事データが整っていなくても始められます。出どころ別に整理すると、着手できる順番が見えます。
出どころ別の着手順
すぐ出せる ─ 会社の基本情報
従業員数、拠点数、創業年。会社概要から転記できます。掲載率が高いのはこの層ですが、差はつきません。まずここを土台にします。
集計すれば出せる ─ 労務管理システム
有給取得日数、男性育休取得率、平均残業時間、勤続年数の分布。すでに保持しているデータで、集計の手間だけがかかります。差がつくのはここからです。
部署に聞けば出せる ─ 事業と制度
事業別の売上構成比、職種別の人数、社内公募の実績、研修の時間数。経営企画や各部門への確認が要りますが、年1回なら回せます。
数えれば出せる ─ その社にしかない数字
社内部活動の数、社内イベントの回数、使っているツール、扱っている商品数。データベースになくても数えれば出ます。警視庁のパトカー台数やfreeeの書籍購入数がこの層です。
Frequently Asked Questions
「数字で見る」についてよくある質問
「数字で見る」にはどんな項目を載せればいいですか?
RELENSが11ページを調べたところ、最も多かったのは従業員数・育休取得率・研修の実績で、いずれも約55%でした。次いで有給取得日数と創業年が約46%です。ただし多く載っている項目が候補者の役に立つとは限りません。平均残業時間や離職率は18%しか載せていませんが、候補者が最も知りたい数字のひとつです。載せられる数字ではなく、候補者の疑問に答える数字から選んでください。
「数字で見る」は採用サイトの定番コンテンツですか?
定番と紹介されることが多いのですが、RELENSが採用サイト69件を調べたところ、持っていたのは14件(20.3%)でした。5社に1社の割合です。必ず要るものではなく、募集要項や勤務条件が揃ったあとに効く一手として考えてください。
「平均年齢」は載せたほうがいいですか?
調査では平均年齢を載せていたのは11ページ中2ページ(18.2%)だけでした。一般的な記事では代表項目として必ず挙がりますが、実態はそうなっていません。平均年齢32歳と書かれていても、20代が多いのか30代に偏っているのかは分かりません。載せるなら年代構成とセットにしてください。
数字には何を添えればいいですか?
数値・定義・対象者・集計期間の4つをセットにしてください。「育休取得率100%」だけでは判断に使えません。「2025年度に取得対象となった社員12名のうち12名が取得」まで書いて、初めて比較できる数字になります。定義のない数字は、候補者から見れば根拠のない主張と同じです。
自社に不利な数字は載せないほうがいいですか?
離職率や残業時間を載せている企業は実際にあります。伏せた場合、候補者は口コミサイトの推計値で判断することになり、出典も集計方法も自社では選べません。自社で出せば条件を添えられます。ただし数字だけを置くと必ず悪いほうに読まれるため、なぜその水準なのかを1行添えてください。
平均値だけ出せば十分ですか?
平均残業時間15時間と書かれていても、全員が15時間なのか、半分が0時間で一部が30時間なのかは分かりません。可能なら中央値、年代や職種ごとの内訳まで出してください。講談社は勤続年数を平均ではなく5年刻みの分布で出しています。分布のほうが、候補者は自分の位置を推定できます。
「数字で見る」ページはSEOに効果がありますか?
「数字で見る 採用サイト」のような一般語で自社の採用サイトが上位に来ることはほとんどありません。効くのは社名で検索されたあとの判断材料としてです。流入を増やす施策ではなく、来た候補者の意思決定を支える施策として位置づけてください。
実際の採用サイトをもっと見る
このページの数字のもとになっている69件は、すべて実際にサイトを開いて記録したものです。企業ごとに、採用メッセージの設計、コンテンツ構成、表現手法、RELENSの考察を分けて読めます。